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in the field

 野山には沢山の植物が自生しています。蔓植物もそのひとつですが、クズのように冬には枯れてしまう1年草もあれば、フジのように大木を飲み込むほどに成長する寿命の長い樹木もあります。どちらの種類も蔓籠を作るのに利用できますが、1年草のクズは夏のあいだ、もの凄い勢いで成長するため、つるが柔らかく、採ってから時間が経つとしぼむというか痩せてきてしまい、長く使う籠には向きません。一方、樹木に分類される蔓は堅くて、時間が経っても痩せたりすることはありません。それでいてしなやかで編みやすいのがツヅラフジという、フジとはまったく違う植物です。わたしたちfieldfingerのtu ru ka goは、このツヅラフジを主に使っています。
 彼ら蔓植物の特性はみなさんご存知の通り、他の植物や、何かの構造物_たとえば電柱や塀や建物の外壁_に絡みついて成長するということ。ですから彼らがどんな場所を生育地として選ぶのかといえば、絡みつける何かがあるところ、ということになりますが、彼らはどうやってそのことを知るのでしょう?植物の叡智というものは、ほんとうに不思議です。
 さて、fieldfingerでは、11月になるとそろそろ蔓を探しに出掛けます。蔓を採集するのは11月から3月くらいまで。この時期に採る蔓は、枯れた葉を落とした後、寒さから身を守るようにグッと引き締まって組織が堅くなり、丈夫で、時間が経ってもその姿を保ってくれるから、と先輩に教えられました。そうでなくても、野山が茂っている時期には草深くて入り込めない場所も多いし、蛇やら何やら会いたくない生きものたちも活動していますから、うっかり茂みに立ち入りでもしたら、たいへんです。
 お目当てのツヅラフジは、以前住んでいた地域の言葉ですが「どさっかぶ」と呼ばれる場所でよくみつかります。低い里山の裾野、平地との境のようなところ、山から続く背の高い木が背後にあり、手前にはびっしりと篠竹が生い茂っている_そんな場所です。
 蔓をみつけても、とにかく何かに絡みついているわけですから、採るのはなかなか根気が必要です。篠竹に絡みついた蔓は採るのに一苦労だし、高い木に這い上った蔓はどこから繋がっているのかわからない。何本ものつるがすでに絡まり合って合体しているときは、どこをどう切ればいいのか考えてしまう。何とか切り取っても、その縺れた蔓はそのままでは使えないし、運ぶのもたいへんなので、その場で縺れた蔓を解きほぐし、くるくる巻いて持ち帰ります。
 採った蔓はすぐに堅く折れやすくなるので、採ったらすぐに編み始めるのが、いちばん楽ちんなやり方です。数日以内に編めるだけ編み、残ったらぐるぐる巻きのまま、雨の掛からないところで保管します。わたしは家の駐車場のルーフの下に蔓専用のハンギングバーを作って、ここに掛けて置きます。こうしておくと1年経っても使用可能です。ただし、かちかちになっていますから、使うときは前もって水に浸けて、しなやかさが戻ってから。
 蔓が手に入れば、籠作りは半ばまで進んだことになります。みつけると、すぐにどんなものを作ろうか、構想が膨らみます。蔓探しはたいへんだけれど、楽しい仕事です。

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